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「あぶらむ物語」大郷博(初稿) [詩人・読書]

あぶらむ物語―人生のよき旅人たちの話








倉敷「レモングラス」からお借りし、後で購入した本。

著者の大郷博さん、いい意味で「変わった人」ですね。
最初船乗りになろうとしたり、当時珍しかったハワイへの一人旅
に出たり、ホテルマン養成の学校に入ったり・・・。
自分探しの旅路の末、大郷さんはハンセン病療養所沖縄愛楽園と出会い、愛楽園での経験、園の基礎を築いた青木恵哉氏の臨終に
立会い、一生かけて探求すべき「課題」を見出します。
そして神学校を経て立教大学チャペル( 英国国教会)の牧師
(チャプレン)に就任します。

牧師としての活動は「経験すること」が大事なんだと毎夏有志の
学生を連れて愛楽園を訪ねてボランティア三昧の「沖縄キャンプ
」があったそうですが、それはそれは厳しいもので「大郷地獄」
と呼ばれたのだそうです。(どんな地獄だったんだ?)
このキャンプに参加された方々のレポートが2,3掲載されてお
ります。いかに魂を揺さぶられる経験であったのかが読み取れま
す。

また「キリスト教は砂漠で生まれた宗教だから砂漠という原体験
を経験せねば・・・。そうだ日本にも砂漠はある。それは海だ!
」という事でなけ無しのお金をはたいて外洋航海できるようなヨ
ットを買って文字通り「原体験」をしたり・・・。

以前、禅の専修道場の住職の講演を聴いた後、一緒に食事する
機会がありました。
坊主頭だらけの中に自然に坊主頭になりそうな私。
この会には住職を慕って宗派を問わず近隣の禅寺の住職のほか
真言宗の住職も混ざって、この方がまた忌憚のなく口にされるの
で話が弾み大変趣あるものでした。

ある遠方からいらした住職が「悟り」という状態を得たいがために
若い頃、LSDを1度だけ服用されたことがあったという話をされて
内心ぎょっとしました。

今は「麻薬」として取り扱われるのですが、以前はアメリカの精
神療法に処方される薬剤で知人が持ち帰ったものを1錠服用され
て、半日は恍惚とできたのだけれど、その後激しい嘔吐に襲われ
て「やっぱり安易な方法はダメだったね」という事だったんです
が、大郷さんや「悟り」の状態を体験したいばかりにLSDを服
用された禅の住職のような猪突猛進、行動する方って最近見かけ
なくなりましたね。
寂しい限りです。

ハンセン病をめぐる長い偏見の歴史。それはこの病気が抗生物質
を服用すれば治癒してしまうようになったにもかかわらず、つい
この間まで法律として正当化されていたのですね。これは改めて
考えるにやはりショックでした。
ただこの本ではハンセン病を巡る国家の人権侵害を、日本の穢れ
(ケガレ)思想を糾弾するという目的はなく、社会から追い立てら
れるように疎外され療養施設がない時代は人里離れた場所に小屋
を建てあるいは洞窟に暮らし野垂れ死に、療養施設が出来てから
も強制的去勢手術等を受け入れざる得なかった人々の悲しみ、そ
れでも生きてゆきたいと言うぎりぎりの希望が綴られています。
心に残った少し長い引用文があります。興味のある方はこちらこちらをご覧ください。

後に牧師を辞め「あぶらむの会」を作り飛騨高山に「あぶらむの宿」建設に至った経緯などについて綴られています。
牧師を辞めた大郷さん、資金のメドなどさっぱりゼロで自分で建
物を作るつもりで木工関係の職業訓練校に入ります。高山に旅人
の宿を作ろうと町と交渉に入りいざ場所も決まってさぁ決済とい
うところで「金はありません・・・。」(このくだりのやりとり
は失礼ながら笑いました)。

「あぶらむの宿」は一般的な宿とは少し趣が違うようです。
本書に出てきた「あぶらむの宿」の雰囲気が伝わってきそうな文
章をいくつか挙げておきます。
こちらをご参照ください。
一文だけとても心に残った文章がありますので直接こちらに転載
します。

______________________________________________________
私は現在、飛騨の山中で旅人の宿の主をしている。いろんな人が
訪ねてくる。そしていろんな人から相談を受ける。その中でひと
つ感じることは、自分と「和解」出来ている人は多くはないとい
うことである。
人生で受けた傷や受け入れがたい現実など、私たちはいろんな自
分を背負っている。
しかしそれらすべてが私である。それを認め、それを受け入れる
時、本当の私の人生旅路が始まるのではないだろうか。自分が自
分のことを好きになると、不思議と「勇気」がわいてくる。「転
んだら起きる」という旅する力は、ひょっとしたら自分との和解
からから生まれてくるのではないかと思う今日このごろである。
P330
______________________________________________________
山尾三省さんが死病に冒されていた時、
「人生で遭遇したすべての事をありがとうと赦せて逝けるなら最
高だな」というような事を本で語られていました。
先般紹介した加藤清さん「前世療法」という私には
まだ理解の範疇を越えた心理療法を時として採られるそうですが、
(無知ゆえの誤解を恐れず語るなら)そうした心理療法を採ったと
しても自分が経験した過去そのものを変えることはできないと語
っておられました。ただ未来を変えることはできると・・・。
世間の誰も自分を認めてくれない、でも自分で自分を認める、赦
すことができるのならば一歩踏み出せる、そんな気がします。
この世知辛い世の中で悩み苦しむ人が数多く生きていることを経
験者として知っています。
私もかつて長く苦しみ、そしてまたつまずくかも知れません。私
には何もして差し上げる事はできません。ただ方々の生き方を「
それでいいんだよ」と言うことしか・・・ね。

一度訪ねて大郷さんと酒でも飲みながら(お酒はお好きなようで
す)話をしてみたいです。
来年の夏、石川の李政美ファン恒例のライブスケジュールをうま
くリンクできないかなぁ。
私も将来「あぶらむの宿」ほど大規模でもなければ、そもそも宿
でもない「場」を作りたいと思っているのです。

思えばこの本を貸してくれたレモングラスさんも場を提供しよう
と、それは私のような人間だったり、障害を持つ子供たちに有機
農園で収穫体験をしたり、お店の掃除に(本当はそんな必要はな
いんだけど)自立支援施設から毎週掃除に来てもらって、バイト
代を払ってお茶を飲んで会話したり。

弱者や少数派をまるで居なかったかのように取り扱う社会は、誤っている。
全てにおいて多数派である人なんてどれだけ居るでしょう。
また自分は常に多数派を装うことが幸せなんでしょうかね?。

 ⇒小石ぬぐとぅ
   「ドスマキとは何か?」という記事で青木恵哉氏について
   触れられています。
 ⇒ ファミリー旅行記
   2004年5月4日5日の「飛騨古川・アブラムの宿・飛騨高山
   」の記事で「あぶらむの宿」を紹介されています。
 ⇒ハ ンセン病のリンク集
   ハンセン病を巡る諸問題を網羅的にリンクされています。

______________________________________________________
【更新履歴】
2005-12-23 10:01:21 まだ読み終えていないにもかかわらず
              初稿着手
2005-12-24 06:42:43 「アブラハム」を独立した記事とするた
              め削除
2005-12-24 13:39:50 抜粋記事を転載(ああ、時間がない!)
2005-12-24 16:00:00 クミコさんに本返却。また2時間雑談。
2005-12-25 19:32:45 ようやく初稿完成
2005-12-25 20:25:53 TBを入れました。
2005-12-26 02:17:57 一部コメントを追加
              (近日中改訂予定)
2008-08-19        長い熟成期間?を経てようやく改訂

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コメント 10

ひらめ

『あぶらむの宿』って あるンですね!
 世の中には サンタさんの心を 持たれて、「心の居場所作り」をされてる方たちが あちこちに いらっしゃるものデスね。
 クリスマスに 心温まる お話を ありがとうございマス(^_^)/~
by ひらめ (2005-12-25 13:14) 

binten

ひらめさん
こんばんは、メリークリスマス(クリスチャンじゃないけどね・・・。)
コメントありがとうございます。
今回紹介した本も回りまわって(これを話すと長くなります。)ボクの手許にしばらく居てもらったものです。これまで高山は何度か訪ねたのですがそこは観光の対象でしかなく物足りないものを感じていました。今度高山を訪ねる機会があれば「あぶらむの宿」に泊まって自然を味わった後、大郷さん宿泊されてる方と話をしてきたいと思います。

>世の中には サンタさんの心を持たれて、「心の居場所作り」をされてる方たちが あちこちに いらっしゃるものデスね。
そうですね。でもサンタさんの気持ちになると人に何かを分かち与えることで随分彼の心も救いを貰っているような気もするのです。邪推かな?。

>クリスマスに心温まるお話
ありがとう。
数年前までこの季節は「何か自分にできる分かち与え」をしようと心がけていたのです。
敢えてこの季節、という訳ではありませんがボクもまた多くの人の気持ちに恵まれてここまでこれたのですから。
by binten (2005-12-25 20:45) 

hiromi

Bintenさん、お久しぶりです。
紹介してくださった「祈り」を今読んでいるところです。
思っていたより分りやすい言葉で、でもストレートに心に響く詩ばかりですね。

ところで、私も人権講座でハンセン病のことを学び、香川県大島青松園に行って県人会の方たちと交流してきました。
青木恵哉氏もこちら徳島の出身なのですよね。
四国はハンセン病とはいろいろな面で関係の深い土地です。
現在では四国の中でも特に徳島はハンセン病への啓発に力を入れているようです。
私は関連書はほとんで読んでないのですが、いずれ私自身が見聞きしたことをブログに書きたいと思っています。
by hiromi (2005-12-28 22:00) 

binten

hiromiさん
こんにちは
コメントありがとうございます。
今は徳島も風が吹いて寒いのでしょうね。

ハンセン病、戦前の人権侵害やら、らい予防法撤廃の遅れや国との訴訟問題、もろもろ問題はありますし、歴史として見てもそこから示唆されることはいろいろありそうです。
でもまだ歴史にしてしまうには全然早すぎる。
生命の少しだけ先輩として接する機会があれば、と思います。
ハンセン病については以下のサイトにリンクがまとめられております。
http://www.eonet.ne.jp/~libell/main.html
ハンセン病と四国の関係については今調べたところ
http://www.geocities.jp/michio_nozawa/episode40.html
http://www.geocities.jp/michio_nozawa/episode41.html
に参考になりそうな記載がありました。(野澤道生さんありがとう!)
ボクも勉強してみます。

山尾三省さんの本はすでに絶版のものも少なくありません。
「ここで暮らす楽しみ」なんて絶対再版されるべきだと思うのですが近頃では古本でさえ入手が難しくなってきました。
来年は「ここ」を見つけられる方、今いる所を「ここ」だと気付かれる方が1人でも沢山出てらっしゃるとうれしいなとワクワクしております。
よいお年を!。

hiromiさん&きんこさんのブログ『しわしわいこか!』
http://hiromikin.exblog.jp/
香川県大島青松園
http://www.hosp.go.jp/~osima/index1.html
by binten (2005-12-29 12:44) 

hiromi

さすがBintenさんですね。
さがす手間を省いてくださってたいへん助かりました。

元患者さんの平均年齢は80才近いそうです。
お会いして話を聴ける時間があまり残されていません。
幸いこちらでは地元と大島、両方での交流会が活発なので、できるだけ参加して生の声を聴きたいと考えています。
また、何か情報があれば教えてくださいね。
by hiromi (2005-12-29 14:38) 

binten

hiromiさん
こんばんは
>元患者さんの平均年齢は80才近い
そうなります。ボクもこれを機にハンセン病とは何ぞや、元患者さんと触れる機会を模索してみたいと思います。
hiromiさん今年はどうもお世話になりました。
10月李政美ライブ楽しい思い出になりました。
by binten (2005-12-31 21:04) 

依光次郎

nice!
ありがとうございました。

縁が深いと書かれているように、四国八十八ヶ所は,ある意味,ハンセン氏病患者のためにありました。

今後、時々読ませて頂きます。m(_ _)m

by 依光次郎 (2008-08-19 14:33) 

binten

依光次郎さん

コメントありがとうございます。

>四国八十八ヶ所

遍路地図を見て、ふと不思議に思ったのですが、札所のほとんどが古い海岸線、または吉野川流域にあります。
お遍路と海(または水)との関連が何かあるのかもなとぼんやり思いました。

ハンセン病とお遍路さんの繋がりももう少し勉強できればなと思います。

ハンセン病問題、何冊か本を読んだのですが「総合的に判断すると」というのは諦めました、というより総合的に、理知的な判断しがちな自分は何か間違っているのではないかと現在思っている次第です。

夏に青龍寺近くの国民宿舎土佐に泊まったことがあります。
屋上から夜空を眺めると、星空と船の明かりの区別がつかず不思議な光景で、日の出が大変美しかったです。
昼間から露天風呂に入ってぼんやり海を眺め、思わず延泊してしまいました。

ありがとうございました。
by binten (2008-08-19 19:29) 

依光次郎

四国八十八ヶ所は、昔のテーマパークの大きなものでしょうか(^^;?霊的な景色の良い場所にあるとか・・・。

ハンセン病云々は映画「砂の器」でも描かれていたように、発病されると「地元にいられなくなる」。このために療養所もできたわけで、決して療養所自体が責められるものではないが、治療可能となった後に存続してしまったことが問題だと思います。

故郷を追われた方たちにとって、四国は温暖で冬に縁の下や軒下などに宿をとっても凍死する可能性が少ないためとされていたと思います。往事を知っている住職がご存命ならハンセン病遍路さんの壮絶な生き方を聞くことができると思います(新日本紀行「白い旅人たち」の時点ですでに昔はと語られていました)。

国民宿舎「土佐」(^_^)。あの道をドライブコースにしているもので、時々コーヒーを頂きに立ち寄ります。開放的な景色良いですね。

by 依光次郎 (2008-08-21 10:44) 

binten

依光次郎さん

コメントありがとうございます。
「砂の器」をお教えいただきありがとうございます。

国民宿舎土佐を訪ねたのは増築オープン直後のことで南欧風(?)の風景を朝からカメラを持ち歩いて撮っている人がちらほらと。
年末年始は予約でいっぱいとの事でした。

前回は移動費をケチって青春18切符での旅行でしたが、次回はぜひ車にしたいと思います。
ガソリン代安くなればいいんですが。
by binten (2008-08-22 00:31) 

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